怖い農薬の話

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このページでは怖い農薬の詳細について紹介しています。難しい話なので、興味がない人はその次のページへ進んでください。

>>「残留農薬・輸入農作物の問題」を読む。

今でも悪影響を残す「有機塩素系農薬」

20世紀ではDDPなどの有機塩素系農薬が世界中で普及しましたが、環境中での残留性や体内での濃縮性が問題となったため、現在では先進国を中心に使用が禁止となり、日本でも1971年に農薬としての使用が禁止となりました。最近になって環境ホルモンとして問題になり、現在でも環境中での微量な残留が確認されています。

有機塩素系農薬のDDTやディルドリンはどちらも運動失調などの症状が起こり、乳ガンなど様々なガンの発生に相関関係があると認められました。

有機リン系農薬はサリンと毒性が同じ

有機リン系農薬は種類が多く、現在でもよく使用されている農薬です。有機リン系の殺虫剤は人間や動物への毒性は低いといわれていますが、生分解性が低く環境中や体内への蓄積が問題視されています。

メタミドホスとアセフェート

サリンやVXガスは、有機リン系の構造を持っています。また、中国産冷凍餃子事件の原因物質であるメタミドホスも有機リン酸系農薬でした。もし有機リン系農薬を高濃度で吸収した場合は、毒性が非常に高いため、深刻な中毒症状が現れます。

メタミドホスは、毒性が高いため先進国では使用されていませんが、中国産の輸入野菜から検出されることが度々ありました。

メタミドホスは日本でも農薬登録されていませんが、アセフェートという農薬登録されている有機リン系の殺虫剤があり、毒性が弱いとされています。しかし、環境中のアセフェートがメタミドホスに化学変化を起こし、国産農作物中に検出されたことがありました。メタミドホスはアセフェートの代謝産物なのです。

また、アセフェートは、胎児への影響が報告されています。また、ウグイスやつぐみ、ひばりなどの方向感覚を狂わせるという研究結果が報告されています。他にも水や海洋汚染の危険性も懸念されています。

パラチオン

パラチオンは、非政府組織・国際殺虫剤ネットワークによると、パラチオンは最も危険な有機リン系の殺虫剤とされています。アメリカでは、1966年以降650人が被害を受け、そのうち100人の農業従事者が死亡しています。

日本では、1953年に1564人が中毒、70人の死亡、1954年には1887人が中毒、70人の死亡が報告されました。毒物として自殺や他殺に使用され社会問題となりました。

中毒症状としては、唾液分過多、発汗、吐き気、嘔吐、頭痛、腹痛、下痢、痙攣が起こり、重篤になると呼吸困難、呼吸停止に陥ります。

現在は、「毒物及び劇物取締法」の特定毒物に指定されており、許可なく使用した場合は処罰の対象になります。WHOやPANなど数多くの環境団体では、全世界での完全使用禁止を求めています。

マラチオン

マラチオンは、害虫駆除を目的とした有機リン系農薬です。現在は日本では禁止されているため使われていませんが、海外ではポストハーベスト農薬(収穫後の農作物に使用する殺菌剤や防かび剤)を使っている国があり、輸入された農作物から検出されたことがあります。作物残留性農薬・水質残留性農薬です。

ダイアノジン

ダイアノジンは、農業から園芸用まで幅広く使われている有機リン系の害虫駆除剤で、稲につくウンカ、ツマグロヨコバイ、野菜につくアオムシやアブラムシの害虫駆除に、家庭用としてはゴキブリやシロアリの駆除の殺虫剤として使用されます。ペット用ノミ取り首輪に使用しているものもあります。

120度以上に加熱されると分解し有毒な物質となります。また、強酸や塩基と反応すると、猛毒を生成します。シックハウス症候群の原因になるとして指定値が定められています。環境中では、鳥やミツバチへ影響を及ぼします。

ジクロルボス

ジクロルボスは揮発性が高く、即効性があり残留性が低いという特徴を持つ有機リン系農薬で、2012年に農薬登録は失効しており、現在は家庭用スプレー式殺虫剤、くん煙殺虫剤などの有効成分として使用されています。ジクロルボスは、有機リン系農薬ノトリクロルホンの代謝産物です。

有機リン系農薬の中でも非常に毒性が強いため、使用方法を厳密に守る必要があります。

カバーメート系農薬

有機リン系農薬は毒性が高いものが多かったため、毒性の低いものを求めカバラル豆に含まれるフィゾクチグミンの殺虫作用を利用したカバーメート系農薬が開発されました。

アルディカーブ

日本では農薬登録されていないカバーメート系農薬で、殺線虫剤です。

インドでアルディカーブの原料メチルイソシアネートが流出し、50万人が被ばく、約2500人が死亡したことでアルディカーブの猛毒性が明らかになりました。中毒症状として流産・呼吸器障害・失明・視力障害が、多数の人に見られました。

アメリカで高い濃度のアルディカーブが検出され、日本の保健当局者が輸入業者に輸入バナナの残留農薬検査を義務付けたとされています。

メソミル

農業用に用いられるカバーメート系農薬です。動物や人への毒性が強く、野鳥や犬、猫がメソミルを混入した餌を食べ中毒死する事件が今でも続いています。

一般的な農薬で容易に入手することができることから、動物の毒殺事件が相次いで起こると考えられます。

メソミルは体内に入ると酸の強い胃液の中で、ハムなどの亜硝酸塩と反応して発がん性物質へと変化することが知られています。

ピレスロイド系殺虫剤

除虫菊に含まれるピレトリンという成分と同じような構造を持つ化合物群ピレスロイドは、蚊取り線香や噴霧型殺虫剤など家庭用殺虫剤として使用されています。

ピレスロイドは、除虫菊の天然成分であるピレトリンと比較すると残留性が高くなります。家の中で使用することで、食品や食器への付着による口から取り込まれる可能性や呼吸により取り込まれ、体内に蓄積する可能性があります。

シベルメトリン

柑橘系・野菜等のアブラムシの駆除に利用されています。アルカリ性で加水分解します。

フェンバレレート

農業用ピレスロイド系農薬として最初に使用されたものです。高い魚毒性があります。

ペルメトリン

現在も広く使用されています。人畜への害は低いですが、猫と魚類に対しては毒性が高い農薬です。衛生害虫駆除、防虫、農薬、動物の薬品などに使われています。

ペルメトリンを使用した後、室内の粉塵中に高濃度で残留し、壁や畳などに付着するため、ペルメトリンを含む空気中のホコリを吸ったり、畳などを子供が舐めた場合、中毒を起こす危険性があります。

除草剤、虫よけ剤

硫酸ニコチン

たばこのニコチンをアルカリ合成した殺虫剤です。速効性、殺卵効果があり、農作物や果物のアブラムシやグンバイムシの殺虫剤として使用されていました。植物には毒性が低く、人畜には高い神経毒性があります。2006年に農薬登録が失効となり、使用禁止になりました。

ジチオカバーメート系農薬

農作物のカビや細菌の殺菌剤として使用されます。

抗生物質

農作物の病気予防に殺菌剤として使用されます。耐性菌が発生するリスクがあります。

ジフェニルエーテル系農薬

除草剤として使用されています。製品化されてものに不純物としてダイオキシンが含まれる場合があります。

トリアジン系農薬

主に除草剤として使用されています。

フェノキシ系・フェノール系農薬

除草剤として使用されています。不純物としてダイオキシンが含まれる場合があります。

臭化メチル

土壌消毒に使用されていた薬剤です。オゾン層破壊物質に指定され、使用禁止が進められています。

意外と身近にあった農薬成分にびっくり

ここまで、危険性が高く、しかし生活する上で全く無関係とも言えないような農薬が多数あることが分かりました。

蚊取り線香や防虫、殺虫剤は普通に家庭で使用するものです。虫を殺す程の薬品なので危険性は分かっていましたが、農薬の一種であるということは知りませんでした。多用はしたくないですね。

次のページでは、農薬は初めて使われてから今に至るまでの簡単な流れについて触れます。

>>「初めての農薬~「今」に至るまで」を読む。

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