サバ缶、何がそんなに良いの?

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長く続く鯖缶人気の理由

鯖缶の勢いが止まりません。2017年、缶詰業界では長らく魚介部門トップだったツナ缶を抜き、鯖缶が1位となっています。

鯖缶人気の背景には、複数のテレビ番組で「栄養成分が豊富に含まれている鯖缶は、健康やダイエットに良い」などの情報が紹介されたことがあります。

これまでもメディアによって食品のブームは幾度となく起こりましたが、それらの話題はあくまでも一過性であり、しばらくすれば品薄で買えない状態は解消されたものです。

それが鯖缶に関しては、2013年に第一次的なブームが起こった後も、たびたびテレビで取り上げられたこともあり、人気が落ち着くことはなく、むしろ活性化しています。

そのため、商品によっては今も品薄のままとなっており、手に入らずに困っている人も少なくありません。

理由その2:女性の支持が増えた

鯖缶は、男性にとっては以前から酒の肴に愛用するなど、とても馴染みのある食品でしたが、鯖缶がダイエットに良いことを知った女性の間で一気に注目が高まったことで、今の鯖缶人気を作る土台ができました。

さらに、メーカー側も女性に認知されたのを切っ掛けにして、それまでは水煮、味噌煮、醤油煮しかなかった味のバリエーションを、レモンバジル味やオリーブオイル漬けなど、女性に向けた商品を展開し始めました。

これによって鯖缶の売り上げが伸び、再びメディアが鯖缶を取り上げるようになったことから、ますます人気となったと推測されています。

理由その3:缶詰のイメージの変化

缶詰は高温で調理されるため、食材に含まれている栄養成分が失われていると思っている人が多いです。

また、長期保存に向いていることから、保存料や殺菌剤などの食品添加物が多く使われていると思っていませんか?

実際にはその逆で、缶詰は新鮮な食材を真空状態で加熱するため、栄養成分を逃すことなく摂取することができ、開封するまでは密封となるので雑菌の繁殖の心配がないことから、保存料などを使用する必要がありません。

さらに魚の場合は、加圧によって骨まで食べられるようになるのも缶詰のメリットです。

このように、最近は缶詰に対する間違った情報が訂正されていることが、鯖缶人気を後押ししている一つの理由となりました。

鯖缶に含まれる栄養成分とその効果

中性脂肪の低下や肥満予防効果が期待できるEPA

EPAは、エイコサペンタエン酸と言う不飽和脂肪酸の一種(n-3系脂肪酸)です。

体内ではほとんど生成されないことから、食物から積極的に摂取すべきである必須脂肪酸に数えられています。

EPAには、血液の凝固を抑制する働きがあり、血液をサラサラに保つ効果があります。また、血液内の脂肪酸を分解する作用があることから、中性脂肪を減らす効果が期待できます。

EPAの効果は1960年代より、ヒトによる研究が盛んに行われていた経緯もあり、現在は高脂血症や閉鎖性動脈硬化症などの治療薬として承認されているほど。

さらに、EPAには小腸から分泌されるGLP-1と言うホルモンを活性化させる働きもあります。GLP-1は別名「痩せホルモン」と呼ばれており、痩せている人には多く、肥満の人は少ないと言われています。

GLP-1が多く分泌されると、血糖値の急上昇を防いで余分な糖が脂肪として蓄積されるのを抑えたり、胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を促して食欲を抑制する効果があると言われています。

EPAは薄毛や白髪にも効く?

鯖と同じ青魚の鰯(イワシ)の缶詰が、薄毛や白髪に効くという情報がテレビ番組で放送され、鰯の缶詰が売り切れとなりました。その際、薄毛や白髪にいいのはEPAと発信されたことから、鯖の缶詰にも同様の効果が期待できると注目されています。

EPAが薄毛や白髪によいと言われる理由は、血行促進の作用があるからです。

薄毛になる原因の一つに、血液の巡りが悪く、髪を育てる毛根に栄養や酸素が行き渡らなくなることがあるので、血液の流れがよくなることで再び髪が生えてくる可能性があるようです。

また白髪については、髪に色をつけるメラニン色素が不足してしまうことが原因として考えられています。

メラニン色素が不足してしまう要因の一つに、メラニン色素を作るメラノサイトの働きが弱ってしまうことが挙げられますが、それも血行不良によって栄養や酸素が届かなくなっていることが考えられます。

そのため、EPAを含む鯖缶を食べることで、血行が改善し薄毛や白髪を改善する効果が期待されています。

脳を活性化するDHA

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、EPAと同じ不飽和脂肪酸の一種(n-3系脂肪酸)で、鯖を始めとした青魚に多く含まれています。

1990年後半に「魚を食べると頭がよくなる」と言う歌が流行りましたが、まさにその部分を担っているのがDHAです。

DHAは、体内では主に脳に多く存在していることがわかっています。

中でも、神経細胞を結合し神経伝達を行うシナプスや、新しい記憶を短期的に保管しておく海馬という部位に含まれていることから、DHAを摂ることでこれらの働きが活発になり、脳の老化を抑えて認知症やうつ病と言った病気の予防に役立つと考えられています。

また、脳が大きく成長する子どもの時に、DHAを意識して摂取することが大切です。これは、お母さんのお腹の中の胎児でも同じため、妊娠中や授乳中のお母さんは積極的にDHAを摂るようにするとよいでしょう。

皮膚の材料となるたんぱく質、再生を促すビタミンB2による美肌効果

鯖に豊富に含まれるたんぱく質は、皮膚を始め、髪や筋肉、内臓など、体のあらゆる部位の材料となる成分です。またビタミンB2には皮膚や粘膜の健康を維持し、細胞の再生を促す働きがあります。

不足するとニキビやシミ、肌荒れなどのトラブルの原因となるため、たんぱく質とビタミンB2を含む鯖缶は肌の調子を整える効果があると言われています。

丈夫な歯や骨の形成に欠かせないカルシウム、ビタミンD

カルシウムは骨に多く貯蔵されているため、通常の食事では食べることができません。しかし、鯖缶なら骨まで柔らかくなっているので、しっかりとカルシウムを補うことができます。

さらに、ビタミンDには歯や骨にカルシウムが吸着するのを助ける働きがあります。

このため、両方を一度に摂れる鯖缶は、丈夫な歯や骨を作るのにとても適した食品と言えます。

貧血予防に役立つ鉄とビタミンB12

貧血が起こる原因としてよく挙げられるのは、鉄の不足による鉄欠乏性貧血です。

特に女性の場合は、生理や出産で血液が不足しやすいため、普段から鉄の摂取を意識する必要がありますが、一般的に鉄が多く含まれているレバーは苦手に感じる人も多いです。その点、鯖缶ならレバーよりも気軽に鉄分が摂取できます。

また、あまり知られてはいませんが、ビタミンB12の不足によっても貧血が起こることがあります。ビタミンB12は、鉄と同様に赤血球の生成に関わっているため、不足すると貧血を起こしやすくなるのです。

鯖缶には、このビタミンB12も含まれています。ただし、ビタミンB12は小腸で生成される成分なので、通常の食生活では不足することはないと言われています。

サプリメントの代用は?

鯖が苦手な方は、当然ながら鯖缶も食べられません。そのような人でも代用として考えられるのがサプリメントでの摂取です。

サプリメントは、補いたい成分を効率よく摂ることができるメリットがありますが、一方で成分を過剰摂取しやすいことも問題となっています。

特に、EPAはたくさん摂り過ぎると、血液が固まりにくくなるなどの弊害が考えられます。

サプリメントではありませんが、医薬品では肝機能障害などの副作用も報告されていることもあり、調理が面倒などの安易な理由でサプリメントに頼ることはしない方が良さそうです。

なお、ヨーロッパではEPA、DHAの摂取量を一日5g、アメリカでは3gと定めています。

日本ではEPA、DHAに特定した摂取量の目安はありませんが、α-リノレン酸など他のn-3系脂肪酸を含めた推奨量が設定されています。

成人男性の場合は一日2.0~2.4g、成人女性は一日1.6~2.0gです。

ちなみに、水煮缶なら半分を食べると一日の推奨量をクリアします。

鯖缶の効果的な食べ方

鯖缶はそのまま食べても十分に美味しいですが、他の食材と組み合わせることで足りない栄養を補うことができるだけではなく、さらに効果をアップさせることができます。

ここでは、鯖缶を使ったお勧めのレシピをご紹介したいと思います。

EPAに食物繊維をプラスしてダイエット効果を高める!

食物繊維(※)は、EPAと同様に血糖値の急上昇を防ぎ、満腹感を得やすくなる効果がある成分です。

EPAだけでも効果が期待できますが、食物繊維と組み合わせることでより少ない量でも満腹になるので、無理のないダイエット効果が見込めます。

なお、ダイエットのために鯖缶を食べる時は、味噌煮や醤油煮よりもカロリーの低い水煮を選ぶようにしましょう。

(※)食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、不溶性食物繊維はEPAやDHAの排出を促す働きがあるため、同時摂取は控えた方がよいでしょう。

EPAと相乗効果を発揮するのは水溶性食物繊維。水溶性食物繊維は、イモ類や海藻に多く含まれています。

鯖缶とさつまいものご飯

炊飯器に、洗った米、1㎝程度の角切りにして水にさらしておいたさつまいも、鯖缶汁ごと、しょうが、酒を入れて炊飯します。

炊き上がったら、大葉や梅干しを入れてもさっぱりして美味しくなります。

リコピンをプラスして美肌に導く

トマトに多く含まれるリコピンは、抗酸化作用に優れた成分です。

細胞の酸化を防ぐ働きがあるので、肌細胞を活性化させたり、老化を遅らせる効果が期待できます。

また鯖自体にも、ビタミンEやセレンなどの抗酸化作用のある成分が含まれています。

鯖缶とトマトの煮込み

鍋にオリーブオイルを入れ、刻んだ玉ねぎとニンニクを炒めたら、鯖缶(水煮)を煮汁ごと入れて煮込み、最後に塩コショウで味を調えます。

お皿に盛った後、お好みでパルメザンチーズとパセリを散らしてもよいでしょう。

ビタミンKをプラスして骨粗しょう症予防

ビタミンKは、カルシウムが骨に吸着するのを助ける働きがあります。

鯖には同じ働きをするビタミンDが含まれていますが、ビタミンKを加えることでさらにその働きを促してくれるので、骨粗しょう症の予防に期待ができます。

ビタミンKはモロヘイヤやつるむらさき、明日葉、ほうれん草などに多く含まれていますが。お勧めは小松菜です。

小松菜はほうれん草などに比べて癖がなく、生のまま食べることができます。

小松菜と鯖缶のサラダ

粗みじん切りにした小松菜に、鯖缶を汁ごととオリーブオイルを加えて混ぜ合わせたら完成です。

水煮缶の場合は醤油を少し足すと、美味しく仕上がります。

鯖缶は食事全体のバランスを見ながら食べましょう

EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)は、他の不飽和脂肪酸との摂取バランスが大切だと言われており、その比率はn-3系: n-6=1:4が理想とされています。

n-6系脂肪酸が多く含まれる食品には、コーン油やヒマワリ油などの植物油があります。

植物油は一般家庭で調理の際に主として使われているため、n-6系脂肪酸については不足の心配はほとんどなく、むしろ摂り過ぎが懸念されています。

そのため、いくらn-3系脂肪酸を摂っても、n-6脂肪酸の摂取が多ければ、1:4の比率が崩れてしまい、これまで紹介したような鯖缶の効果は期待できなくなると言われています。

このようなことから、鯖缶を健康やダイエットに役立てるには、同時に植物油を始めとしたn-6系脂肪酸の摂取量にも気を配り、食生活全体を見直すことが大切です。

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